サイクルショップ「TURTLE CYCLE」
復興の中心にいる人たちと
交流してほしい
ふくしま浜通りサイクルルートの北端のゲートウェイである新地から南に約65km。南端のいわき駅からは北に40km少々。浜通りのちょうど中間に位置する富岡町のサイクルショップ「タートルサイクル」。代表の野田翔一郎さんは、2024年に富岡町に家族で移住。海を一望できる丘の上に建つ、コンクリートと木材を調和したスタイリッシュなショップをオープンさせた。店長である川崎隼輔さんとともに、浜通りサイクリングの魅力を広めていく。今回、ショップ開業までの経緯やサービス内容、地域の魅力についてお二人にお聞きした。
福島第一原発から10kmの距離で始める自転車ショップ
店長は富岡へ移住した川チュンさん
お店がない浜通りを不安いっぱいな気持ちで走った体験
3年前には何もなかった富岡の更地に、野田代表と川崎店長によるサイクルショップが誕生し、ふくしま浜通りサイクルルートのゲートウェイとしても急速に動き出している。JR富岡駅から近い立地を活かして、現在レンタサイクルの整備を進めている。今後は、本格的なサイクリストだけでなく、手ぶらで訪れた方が気軽に観光サイクリングを楽しめるようにもなる予定。
ところで、なぜ富岡町にサイクルショップの開業を決めたのか。野田さんは、大手外資系コンサル会社員だった2017年から被災地復興事業に携わる中で、浜通りとの縁を深めていった。「被災した会社の支援などをする中で、浜通りの知り合いが増えていきました。特に富岡はじめ原発周辺の地域の方々は、ものすごいアクティブで主体的な方が多くて面白いと感じています。私も、原発事故によって一度ゼロになってしまった街で、何か新しい文化を作っていきたいと思うようになりました。2022年夏に、東京から富岡へ自転車でロングライドをした時、道中に飲食店はないし、自転車ショップもなかった。真っ暗な中で自転車が故障したらどうなるんだろうという不安いっぱいな気持ちで走っていました。あの体験が被災地にサイクルショップを立ち上げる想いを強くしたのだと思います」(野田さん)
そして、いくつか候補地がある中で、富岡に移住し、そこでお店の開業を決めた理由については次のように話す。
「やはり海が近くて、高台からの見晴らしがよい場所があったからです。駅からも近いことも魅力です。このロケーションの中で家族と暮らし、サイクルショップを始めたいと。当時は、福島県が整備を進めるサイクルルートの存在も知りませんでしたので、ルートが目と鼻の先を通っているのは偶然だったんです(笑)」とのこと。
富岡発でサイクリングルートの設計の自由度が高まる
ふくしま浜通りサイクルルートは、いわきから新地まで178kmもある。タートルサイクルがその中間地点にある価値について、野田さんは次のように説明する。「いわきや新地から、富岡、大熊、双葉、浪江などのエリアへ初心者がサイクリングするには、少し距離があります。そこで、富岡を拠点にすれば10km~30kmほどの距離で、復興の中心地をじっくり巡ることができるようになります。サイクリングルート設計の自由度が広がると感じています。東京から常磐線を使って輪行で富岡まで来れば、駅前からシーサイドサイクリングを楽しめます。更衣室もありますので、お店を拠点に楽しんでもらってもよいです。原発事故からの復興を進める地域を富岡発のサイクリングを通して感じてもらいたいです。帰りは小高駅や浪江駅などから輪行で戻ってくるようなワンウェイルートもおすすめです。そして、今後レンタサイクルが整備できれば、手ぶらで来て観光サイクリングを楽しめるようになります」(野田さん)
今、富岡町はお酒と芸術も注目されている。富岡駅前の人気スポットであるレストランを併設する「とみおかワイナリー」、そして日本を代表する現代美術家として知られる宮島達男さんの美術館も誕生する(2027年竣工予定)。芸術とサイクリング、そしてワインを楽しんだあとは電車で帰るというような高尚な楽しみ方もおすすめだ。川崎さんも、2025年秋に富岡へ移住後は、浜通りの多くの道を走ってきた。
「海沿いに整備されたふくしま浜通りサイクルルートは、クルマ通りも信号も少なく本当に走りやすいです。海側だけでなく、阿武隈高地を巡るルートも好きです。富岡の夜の森から川内村へ向かうヒルクライムルートやアップダウンが続く山麓線はよく走っています」(川崎さん)
エネルギッシュでポジテイブな地元の方々との会話